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ネコのマーキング尿が、普通の尿よりクサイ原因究明

掲载日2024.04.11
最新研究

农学部 応用生物化学科
教授 宫崎雅雄
分子生体机能学

岩手大学は、ネコがにおい付けの目的でマーキングする尿が普段の尿より悪臭を放つのは、マーキング尿と通常尿のにおい成分に違いがあるわけではなく、ネコの尿が壁などの垂直物に付着しやすくする成分を含んでいるためであり、マーキングされた場所から地面に流れ落ちる過程で薄く広がることでにおい成分が周囲に放出されやすくなるためということを解明しました。これは岩手大学农学部宮崎雅雄教授、上野山怜子大学院生らによる研究成果です。
ネコは、尾を上げてあちこちの垂直物に尿を吹きかける行动(尿スプレー)をします。スプレー尿は、ネコにとって自分の存在を主张するために重要ですが、强烈なにおいを放つために饲い主さんが抱える悩みの种となっており、住宅街で悪臭问题を引き起こします。ネコの尿は普段でもクサイのですが、スプレー尿のニオイはさらに强烈です。尿スプレーする时に肛门腺の分泌物が混入するからではないかという説もありましたが、そもそもスプレー尿と普段の尿のにおい成分をきちんと分析して比较した报告はありませんでした。そこで研究グループは、ネコのスプレー尿の化学组成や物性を详细に调べ、(成果1)同一个体から採取した新鲜な尿とスプレー尿から放出される化学组成に大きな违いはなく、ネコに嗅がせても二つのにおいを识别できないこと、(成果2)ネコの尿に悪臭原因物质を作るコーキシンという尿タンパク质が大量に含まれていることは分かっていたが、今回新たにコーキシンが尿の濡れ性を高め、垂直の壁にも尿を付着しやすくしていること、(成果3)スプレー尿は、约30㎝の高さから地面に流れ落ちる过程で尿の付着面积を広げ、広范囲からにおい成分を放出するので强力な悪臭源になるが、普段の尿は、直ちに土や砂で覆われてしまうので化学成分が土や砂の粒子に闭じ込められてしまい、悪臭源にならないこと、を明らかにしました。これらの知见は、ネコのスプレー尿がクサイ理由を明らかにするとともに、哺乳动物の嗅覚コミュニケーションにおける尿中タンパク质の役割について新知见をもたらすものです。研究成果は、スプレー尿の消臭にも役立つことが期待されます。
本研究は、シュプリンガーが出版する化学生態学に関する科学雑誌「Journal of Chemical Ecology 」に令和6年4月11日午前0時(日本時間)に電子版で公開されました。

研究の背景

ネコは仲间とコミュニケーションをとる时に、においを使います。ネコは自分のにおい付け(マーキング)のために、尾を上げて垂直物に尿を吹きつける尿スプレー(図1础)をよく行います。スプレーされた尿は、ネコの世界で重要な役割を果たしていますが、强い悪臭を放つため、饲い主にとっては悩みの种となっています。そのため、国内外のインターネットには、ネコのスプレー尿问题を论じるページがたくさんあります。スプレー尿は、ネコが普段トイレで排泄する尿よりもクサイと感じる人が多いです。一説では、スプレー尿に肛门腺分泌物に由来するクサイ化学物质が混入していると考えられていますが、これまでにスプレー尿と通常尿から挥発する成分の化学组成をきちんと调べて比较した研究はありませんでした。そこで研究グループは、スプレー尿がなぜ通常尿に比べてクサイのか解明するために、以下の研究を行いました。

研究手法と成果

まず、7匹のネコからスプレー尿と通常尿を採取し、放出される挥発成分の化学组成を比较しました。検出された化学成分、约70个のプロファイルを统计学的に调べた结果(図1叠)、スプレー尿と通常尿で大别されることはありませんでした(図1颁)。この原因として、スプレー尿と通常尿をとった时间差が影响している可能性も考えられたため、2匹のネコについてスプレー尿を採取した直后に膀胱に残っている尿をカテーテルで採取して同様の解析を行いました。结果、スプレー尿と膀胱尿の化学组成は同一个体でとてもよく似ていることが判明しました(図1顿)。ネコを使った行动试験を行い、ネコはスプレー尿と膀胱尿のにおいの违いを识别できないことも立証しました(図1贰)。以上の结果よりスプレー尿は膀胱尿由来であり、肛门腺分泌物などに由来するクサイ成分が尿に混ざっているわけでないことが明らかになりました。
スプレー尿のクサイ原因が通常尿との成分の违いでないと分かったので、视点を変えてネコ尿の濡れ性(固体に対する液体の付着しやすさ)について调べることにしました。なぜ濡れ性に着目したかというと、実験中にネコの尿をプラスチックシリンジで移し替える作业を行っていたときに、尿がシリンジの内侧に付着して残りやすいことに気になったからです。别の研究で尿からタンパク质だけ除去した除タンパク尿を调整していたところ、シリンジの内侧に尿が残る现象は见られませんでした。宫崎らは、20年前に健康ネコの尿にはコーキシンと命名された尿の悪臭成分を作り出す反応で重要なタンパク质が大量に含まれていることを発见していました。一般に、液体の濡れ性が高いのは、液体の表面张力(物质が表面をできるだけ小さくしようとする性质)が低いときです。そこでネコ尿に高浓度含まれるコーキシンが、尿の表面张力を低下させることで、尿が垂直の壁にも付着しやすくなって、スプレー尿が臭くなる一因になっているという新たな仮説を立てるに至りました。

尿から精製したコーキシンを様々な浓度で水に溶かし、液体の表面张力を测定すると、予想通りコーキシン浓度が高くなるにつれて、液体の表面张力が低下することが分かりました(図2础)。同じタンパク质浓度でも、哺乳类の血液中の主成分であるアルブミン溶液と比较すると、コーキシン溶液の方が表面张力の値が低く、濡れ性が高いことが分かりました。そこでネコ尿を使い、そのままのネコ尿(タンパク尿)とネコ尿からタンパク质を除去した除タンパク尿を準备して表面张力を比较しました。结果、タンパク尿のほうが、除タンパク尿よりも表面张力が低く、より濡れやすい性质をもっていることが分かりました(図2叠)。実际、タンパク尿と除タンパク尿を人工的に垂直に立てたガラス板にスプレーすると、タンパク尿の方が除タンパク尿よりもガラス板への付着量が多いことが実証されました(図2颁)。更に自然环境を模倣した箱庭実験を行いました。ネコ尿をスプレーしたレンガを立てた箱庭からは、ネコ尿特有のにおい成分が大気中から検出されましたが、同じ尿を直接地面(土)に注いだ方の箱庭からは、そのようなにおい成分は一切検出されず、箱庭もくさくありませんでした(図2顿)。これは、土に染み込んだ尿のにおい成分が土の多孔质构造の中に闭じ込められて挥発されないためであり、対照的にレンガの表面に付着した尿は、时々刻々と大気中にその挥発成分が放出されているためです。またスプレーされて広范囲に広がった尿の液滴は、レンガの表面で乾きやすく、尿が液体のまま存在している时よりにおい成分の放出が速く、臭くなりやすいと考えられました。

まとめと今后の期待

本研究では、ネコのスプレー尿がクサイ原因は、肛门嚢分泌物などから悪臭成分が混入しているわけではなく、通常尿と化学成分は同じであるが、タンパク尿依存的に液体の濡れ性が高まり、结果としてスプレーされた场所に悪臭源が残りやすく、まわりがくさくなっていることが分かりました。特にネコのタンパク尿の原因となっているコーキシンは、悪臭成分を作り出す机能を有していることが私达の过去の研究で分かっていましたが、におい付けされた场所に悪臭成分を付着しやすくする机能も有していることが新たに分かり、哺乳动物の嗅覚コミュニケーションにおける尿中タンパク质の役割について理解が深まりました。また、スプレー尿の悪臭问题を低减させる新たな消臭手法の考案にも役立つものと期待されます。

図1.ネコのスプレー尿、通常尿、膀胱尿の化学组成の比较

A.尿をスプレーしているネコの姿。B.尿をガラス管に入れ、挥発成分を捕集剤に浓缩し、それを加热脱着ガスクロマトグラフ质量分析计で分析したときの结果。一つのピークが一つの化合物に相当する。CとD.多変量解析という统计手法でスプレー尿と通常尿(C)、スプレー尿とスプレー直后に膀胱内から採取した尿(D)、から放出される化学成分约70个の组成の类似性を调べた。E.スプレー尿と膀胱尿に対する6头のネコのにおい嗅ぎ时间を计测した。まずネコ2の膀胱尿を30秒间隔で4回提示(60秒提示)すると、ネコは同じにおいに驯化してにおい嗅ぎ时间が减少する。その后、ネコ2のスプレー尿を提示してもにおい嗅ぎ时间が回復(脱驯化)しないが、别のネコの尿を嗅がすと脱顺化が见られるので、ネコは同じ个体の膀胱尿とスプレー尿のにおいの违いを识别できていないことが分かる。

図2.ネコ尿の濡れ性に関する解析结果

A.水にネコ尿から精製したタンパク质を添加していったときの表面张力。タンパク浓度が浓くなるにつれ、表面张力が下がっていく(濡れ性が上がっていく)。オスネコの尿中タンパク质浓度は、0.5~1尘驳/尘濒程度。B.雄ネコの尿(タンパク有)と除タンパクした尿(タンパク无)を电気泳动した时の结果。太いバンドがネコの尿に特徴的なコーキシンのバンド。C.6匹のネコ尿とそれを除タンパクした尿の表面张力。除タンパクすると表面张力が高くなる(濡れ性が下がる)。D.ガラス板を垂直に立て、そこにネコ尿(タンパク尿)と除タンパク尿を人工的にスプレーしてニンヒドリン染色剤で尿が付着した部分を検出した。除タンパク尿は、ガラス面に付着した尿量が少ないことが分かる。E.スプレーされた尿と排泄された尿が残る自然环境を模倣するため、2种类の箱庭を用意した。箱庭1には、ネコ尿5尘濒をスプレーしたブロックを置いた。箱庭2には土に尿5尘濒を染み込ませた。それぞれの庭の大気ガスをガスクロマトグラフ质量分析计で分析したところ、ネコ特有な化学物质は、箱庭1からのみ検出された。

掲载论文

着者:上野山怜子、朱文睿、叁浦靖、宫崎珠子、宫崎雅雄
タイトル:Sprayed urine emits a pungent odor due to its increased adhesion to vertical objects via urinary proteins rather than to changes in its volatile chemical profile in domestic cats .
雑誌:Journal of Chemical Ecology
顿翱滨:10.1007/蝉10886-024-01490-1

本件に関する问い合わせ先

农学部 応用生物化学科
教授 宫崎雅雄
mmasao@iwate-u.ac.jp
019-621-6154